decent-work’s blog

働きがいのある人間らしい仕事の実現支援と啓蒙を行う会社です。中の人たちの徒然を書きたいように書いています。

「転職エージェントは人の命を左右する仕事である」 過労死問題は対岸の火事ではありません。

こんにちは!
ハチです。
 
先日、大手広告代理店の女性社員が過労で自殺をしたことが大きなニュースになりました。
 
どうしてこのようなことが起きてしまったのか…
 
彼女の死を無駄にしないためにも、遺されたご遺族のためにも、二度とこのようなことが起きないよう、
他の企業も経営者も部下を率いる全員が、真剣に考えていただきたい事件だと思います。
 
 
一方で、弊社ディーセントワークの高橋はこの事件を受けて、
「転職エージェントにとってこの事件は対岸の火事ではない」
ということを、人材紹介会社に対し発しました。
 
 
転職エージェントは、ただ単に転職希望者・相談者の話を聞き、転職先を紹介するだけの仕事ではない。
 
「転職エージェントは人の命を左右する仕事である」 と。
 
 
人材紹介会社の方。人材業界の方。
今回自殺された女性がもし、転職エージェントに相談されていたと想像してみてください。
以下のメッセージを是非読んでいただきたいです。
 
 
--------------------------------------------------------------------------------------------------
 
ディーセントワークでは「エージェントは人の命を左右する仕事」と教えています。
勉強会でもそこに触れたりすることもありますが、今回の問題はそれを考えさせられる事案だと思っています。

彼女がもし転職エージェントに相談していたら?
もしそのエージェントが「残業きついなんて甘えですよ。みんな頑張ってるんですから」とか「そんな理由で面接行っても受かりませんよ」とか言っていたら?
ただでさえ忙しい毎日の中で、さらに追い詰める様に「面接いけますか?」「いつ日程もらえますか?」とやたらと連絡していたら?
すがるような思いで転職のプロフェッショナルに相談した結果、「あぁ、もう行き場所がどこにもないんだ」と本人に思わせてしまっていたら?
その結果が、この結末だとしたら?
 
クライアントにコミットして、そのために悩んで転職相談に来る方々がたくさんいることは周知の事実ですよね。
さて、転職エージェントのみなさんは、今回の件は対岸の火事だと思われますか?
 
人材紹介会社には自分事として深く捉えてもらいたいです。
あなたたちが普段行っている面談の一言で、人が希望を失ってしまう事があるということをしっかりと理解してもらいたいです。
 
--------------------------------------------------------------------------------------------------
 
 
 
私はこの高橋のメッセージを読み「本当にそうだな」と感じました。
いったいどれほどの転職エージェントが今回の事件を「自分のこと」として考えているでしょうか。
 
 
同時に、学生時代の自分を思い出しました。
 
私はかなり前の話ですが大学進学の際、「臨床心理士」を目指し、資格の取れる大学を選び入学しました。
 
(「臨床心理士」は国家資格であり、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家“です。)
 
 
悩んでいる人の力になりたい。
ともに光を見つけるお手伝いがしたい。
 
 
おこがましくも、当時の18-19歳の私はそう強く思っていました。
心理学科に進み、臨床心理学やカウンセリングの講義を多く受けました。
 
実際に講義をしてくださる方には当然、現役の臨床心理士の先生もいらっしゃって、現場のお話をしてくださることが多くありました。
 
ある時、その先生が、
「カウンセリングを受けられている方が、自殺をされることもある。」
とおっしゃったのです。
 
 
とても衝撃を受けました。
目が覚めたというか、初めて「カウンセラー」という職業を自分事として捉えた瞬間だったかもしれません。
 
 
 
私は、家族や身近な人の相談に乗ることだけでも心身ともに精一杯になるのに、
これほど命をかけて相談してくださる方の力になれるのか。
 
もしも、自分のかけた言葉の一つの誤りで、その方が自ら命を絶ってしまったら。
もしも、自分の言葉が足りなくて、その方が自ら命を絶ってしまったら。
自分の言葉では何もできずとも、ずっと相談してくださった方が死を選んでしまったら・・・
 
 
 
プロとして臨床心理士になるのであれば、どのような事実でさえもすべて冷静に受け止めなければなりません。
自分自身も人生をかける覚悟で寄り添っていくことが必要かもしれないのです。
 
 
前を向いて、改善していくことばかりを想像していた私はこの話を聞いて、正直、途端に怖くなってしまいました。
 
情けないことにそのまま覚悟が固まらず、臨床心理士の道を断念したのでした。
(その後は色彩心理学認知心理学の道に進みました。)
 
 
 
私のこの回答は良い・悪いではなく、あくまでも私の話であり、正解も不正解もないと思います。
 
何よりその「怖さ」を持てることが大切であり、その「怖さ」を先生は生徒に知ってほしかったはず。
理解し、覚悟し、その「怖さ」を本当にわかっているカウンセラーの方は本当に素晴らしいカウンセラーだと思うのです。
本当に尊敬しています。
 
 
その「怖さ」を転職エージェントの人にもせめて理解してほしい。
そう思います。
 
 
 
「仕事が楽しいと人生が楽しい」というキャッチコピーがあったように、「仕事」と「人生」はしばしばなぞらえて表現されますよね。
それくらい、人の人生において「仕事」というのはとても重要な部分を占めているかもしれません。
 
 
自殺された女性は入社1年目。
私も入社一年目を思い起こすと「辞めるわけにはいかない」と体調を崩しながら踏ん張っていた時期があります。
 
「仕事を辞めれば良かったんじゃない?」
 
自殺された女性に対しそんな一般論も聞こえてきますが、実際に心を病んでいる人には届きません。
当時の私も、「辞める」という発想がまるでなかったし「頑張らなきゃ」とただ真面目に考えていました。
ただ会社から仕事を強いられたわけではなく、私が勝手に自分を追い詰めていたので今回の女性とは大きく異なりますが、今回命を絶った女性の気持ちは痛いほどわかります。
 
 
 
--------------------------------------------------------------------------------------------------
 
よく言われるように時に「仕事はつらい事」だったりするんだけども、
「辛いから我慢する」という事は絶対にやってはならないんです。
例えていうならジョギングや筋トレみたいなもので、
あれって疲れるし大変だしできれば効率的にやりたいんだけど、
我慢してやるものじゃないですよね。
「我慢して皇居走ってます」なんて人はいないはず。
仕事って我慢してやるものではないんです。
大変だしツライこともあるけど、目標とか自分の意思があってやっていくものなんです。
よく「逃げの転職はよくない」なんて言いますが、
おかしな労働環境にいることは病気なのに病院に行かないようなもの。
バイ!と思ったらすぐに退職してください。
それは「逃げ」ではなくて「改善」なのだから。
命を落とすような環境は、もはや会社ではありません。
 
--------------------------------------------------------------------------------------------------
 
 
 
弊社の高橋はこうも言っていました。
 
 
家族。
健康。
外の空気。
時間。
友人。
人生の目的や意味。
立ち止まるとき。
 
 
悩んでいる方に、このメッセージが届きますように。
 
そして、人材紹介会社の転職エージェントの方々が、今回の事件を「自分のこと」として捉えていただけますように。
 
f:id:decent-work:20161013093413j:image